受賞者決定のお知らせ

第63回久留島武彦文化賞受賞決定のお知らせ

令和7年度の久留島武彦文化賞は、9月に開催されました選考委員会において、下記の通り決定いたしました。ご報告とともにお力添えに心より感謝申し上げます。

第63回久留島武彦文化賞
【団体賞】
賞状・賞牌(久留島武彦レリーフ)・副賞30万円

贈賞理由

ロバの音楽座は、中世・ルネサンスの古楽器とオリジナルの空想楽器により、子どもも大人も楽しめる「音と遊びの世界」を作り出すグループである。グループは、そのユニークな活動を楽器演奏、コーラス、音楽劇、仮面劇というスタイルをとって長く続けてきた。
1982年、子どもたちのための合奏団結成以降、木などの自然素材から生まれる古楽器の柔らかい音色を届け、時には新聞紙や石などから作った空想楽器を用いたりもする。作詞作曲を自ら手がけ、語り部的要素にあふれた舞台、講演、ワークショップは楽しく、独自の世界観を伝え続け、年々その完成度を上げている。牧歌的な空気をまといながら、次世代も加わりながらグループを続けていくことは、この時代至難の営為である。想像力をかきたて、自由な発想で音を楽しんでもらいたいという考え方も含めて、この賞にふさわしいと考える。

受賞団体からのメッセージ

このたび、久留島武彦文化賞を受賞できたことを心から嬉しく思っています。
1973年結成の中世・ルネサンス音楽を演奏するカテリーナ古楽合奏団を母体に、1983年にロバの音楽座が誕生しました。これまでの44年間、私たちは古楽器と空想楽器(創作楽器)により「音をあそぶ」をテーマとして、子どもと向き合い作品を創ってきました。古楽器と空想楽器、古いと新しいは、過去と現在と未来への架け橋となり、舞台上演では不思議な化学反応を生み出しています。自然の音を音楽として感じたり、身の回りの物で音あそびをする。それはとても大切な音楽的な行為だと思います。その遊びを通じて得られる経験は、やがて芸術へと繋がっていくと信じています。
便利さが溢れ、AI時代に突入した今、久留島武彦文化賞を受賞したことを機に、子どもたちや大人の皆さんに、さらに豊かな音楽を提供できるよう、一層努力していきたいと思っています。(主宰 松本雅隆)

略歴

1982年 子どもたちに音楽の夢を運ぶべく「ロバの音楽座」結成。古楽器や空想楽器などにより、ファンタジックな音と遊びの世界を繰り広げている。「ジグの空想音楽会」東京都優秀児童演劇選定優秀賞受賞。キッズデザイン賞・創造教育デザイン部門 金賞。「森のオト」社会保障審議会特別推薦などを受賞する。2024年 ロバの音楽座のオリジナル曲「ハッピーソング」が小学校3年の教科書に掲載される。

 

【個人賞】 賞状・賞牌(久留島武彦レリーフ)・副賞10万円

贈賞理由

ライトボックスと砂を使って、ほとんど指だけで幻想的な絵を描き出すサンドアート。飯面雅子さんは日本の第一人者として、サンドアートを使ったパフォーマンスやアニメーション制作など多方面で活躍してきたアーティストである。
飯面雅子さんは、フィンガーダンサーとも言える即興性をもった砂絵の魅力をまずイベントやワークショップという形で広めてきた。そしてファンタジーあふれる物語に基づくアニメ制作にも挑戦している。魅力あるこの独特の世界を守りながら、サンドアートをさらに極め、広め、深めるという思いは、多くの人の心を揺り動かしてきた。
砂は子どもの頃に触れる身近な素材だが、筆や絵の具を使わずそこに様々な情景が浮かび上がり、驚きに満ちた場面展開が繰り広げられるこのアートの活動は、この賞にふさわしいと言える。

受賞者からのメッセージ

第63回久留島武彦文化賞を頂き、とても光栄です。
砂アニメーションとサンドアート・パフォーマンスを題材に、今まで学校などの美術教育に関わらせて頂いたのは3種類の展開があります。
①小学校から高校までの「芸術鑑賞会」は要望に合わせての約90分公演。クラシック音楽に合わせてのオリジナル演目や『銀河鉄道の夜』『人魚姫』など原作付き作品を中心に上演します。②小学校の「総合学習」は地元横浜市を中心に各年度1クラスを引き受け、1年間関わります。仕上げは生徒たちが保護者に向けてや地元施設での発表会をします。③文化センターなどでの「ワークショップ」は春休み夏休みに行われ、自由研究で提出できる形にします。
これからも、子どもたちの原体験である砂場遊びから、アナログな手の感覚で造形を描く表現する喜びに繋がり伸ばせる機会が増えるように、自分の表現にも活かせるように精進いたします。本当にありがとうございます。

略歴

サンドアーティスト。武蔵野美術大学卒業。広告デザイナー勤務を経て、1987年TV 『きまぐれオレンジ☆ロード』砂アニメ制作(日本人初)。ベルギーにて海外初パフォーマンス上演。「笑っていいとも!」テレビ出演多数。2014年NHK交響楽団とNHKホールにて共演。舞台『NARUTO』BGVシーン演出。2017年イタリア公演。企業イベント周年記念や学校芸術鑑賞会、CM、MV等、映像制作多数。来年40周年を迎えるサンドアートの第一人者。

(敬称略)

選考委員(五十音順・敬称略)
衛藤征士郎
小森美巳
結城昌子
井田 正文

第46回巖谷小波文芸賞受賞決定のお知らせ

令和7年度の巖谷小波文芸賞は、9月に開催されました選考委員会において、下記の通り決定いたしました。ご報告とともにお力添えに心より感謝申し上げます。

第46回巖谷小波文芸賞
賞状・賞牌(巖谷小波レリーフ)・副賞50万円

贈賞理由

絵本作家として『海のアトリエ』でドゥマゴ文学賞、講談社絵本賞、小学館児童出版文化賞を受賞。児童文学作品でも『ひみつだけど、話します』で坪田譲治文学賞を受賞するなど、広範な活躍が高く評価されている。
今年の六月刊行の、絵本『いま、日本は戦争をしている―太平洋戦争のときの子どもたち―』では、17人の当事者から取材し、その記憶をもとに絵と文章で戦争中の子どもたちの日常をリアルに再現してみせた。歴史の表舞台では語られることの少ない子どもの戦時体験を濃密に描いたこの本が、戦後80年に出版されたことの意義は絶大である。
これまでの多彩な表現活動とともに、これを顕彰して堀川理万子さんに今年度の巌谷小波文芸賞を贈賞する。

受賞者からのメッセージ

このたび、巌谷小波文学賞を賜りましたこと、謹んでお礼申し上げます。
巌谷小波先生が、各地に残る物語を蒐集されたこと、そして、子どものための物語を創作されたことは、のちの私たちが絵本や児童文学を創作する上での礎であり、深い感謝を覚えます。
太平洋戦争時に子どもだった17人の方々に話を聞き、その記憶を絵と文にしていく作業を3年間続けて、絵本『いま、日本は戦争をしているー太平洋戦争のときの子どもたちー』に、まとめ終えました。そこで、痛切に思うのは、戦後は90年、100年、さらには無限、というふうにしていかなくてはいけないということです。世界各地で諍いが絶えないこと、そして、他国の人に対し排他的な風潮があちこちで見られることは大きな懸念です。子どもたちに対して、恥ずかしくない世界を作る気概を持ち続ける大人でいたいですね。
この賞を励みにこれからも歩んでいきたいと思います。身に余る栄誉を誠にありがとうございました。

略歴

画家・絵本作家。東京藝術大学大学院美術研究科修了。タブローによる個展を定期的に開催しつつ、絵本の制作を続けている。絵本『海のアトリエ』(偕成社)で第31回Bunkamura ドゥマゴ文学賞、第53回講談社絵本賞、第71回小学館児童出版文化賞。『ひみつだけど、話します』(あかね書房)で第40回坪田譲治文学賞。近作『いま、日本は戦争をしている』(小峰書店)、『クリスマスのくつした』(のら書店)。

(敬称略)

選考委員(五十音順・敬称略)
巖谷國士
さくまゆみこ
野上 暁

贈呈式の開催は今年も見送ります。

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