受賞者決定のお知らせ

第44回巖谷小波文芸賞受賞決定のお知らせ

令和5年度の巖谷小波文芸賞は、去る9月14日の選考委員会におきまして、下記の通り決定いたしました。ご報告とともにお力添えを感謝いたします。

第44回巖谷小波文芸賞
賞状・賞牌(巖谷小波レリーフ)・副賞50万円

贈賞理由

長倉氏は、最初は戦場カメラマンを目指すが、しだいに困難を抱えながら日常を生きようとしている人たちの姿に目が向くようになる。アフガニスタンの抵抗運動指導者に密着取材した『マスード〜愛しの大地アフガン』で1993年に土門拳賞、戦場からの再生を目指すコソボの一家を取り上げた『ザビット一家、家を建てる』で2005年に講談社出版文化賞を受賞。アフガニスタンの学校への支援や、自分の経験を次世代に伝える釧路での活動も続けながら、『人間が好き〜アマゾン先住民からの伝言』、『元気? 世界の子どもたちへ』、「ともだちみつけた」シリーズ、「世界は広く、美しい」シリーズなどの写真絵本や著作で、世界各地の子どもの様子を日本の子どもに伝える活動に力を注いでこられた功績が高く評価された。

受賞者からのメッセージ

今回、授賞のお知らせをいただき、大変うれしく思います。ただ、この賞は、自分にだけではなく、私が出会った子どもたちすべてへのエールなのかなと思っています。
いままで、写真を撮ってきた子どもたちの顔が浮かびます。仲良くなると、自分の家に招いてくれたり、「ここを撮ったらいいよ」とお気に入りの場所を案内してくれたりします。そんな子どもたちは私にとって「小さなともだち」でした。売れ残った新聞を手に市場の端に座り込んで小さなため息をついたり、山の斜面でつらそうにコーヒーの実を摘む子もいました。でも、私は、厳しいことがあっても、真っ直ぐに前を向く子どもたちの姿に惹かれます。風邪で熱があっても「家族が困るから」と水汲みをし、市場では小さな子の分まで野菜を売ってあげる、誰かが暑さで倒れるとみんなで駆け寄って介抱します。そんな姿が忘れられません。いつも私に大切なことを気づかせてくれる子どもたち。これからも、「やあ」と声をかけながら、その姿を撮っていきたいと思っています。

略歴

1952年、釧路市生まれ。写真家。1980年から世界の紛争地やアマゾン、シベリアのツンドラ地帯などの辺境地を取材。2017年、東京都写真美術館での「フォト・ジャーナリスト長倉洋海の眼 地を這い、未来へ駆ける」展を開催。フランス、サハ、ブラジルにも招かれ写真展を開催する。2015年より実家を使って、世界で出会った人と受講生をつなぐ場として「長倉商店塾」を開講。現在、映画「鉛筆と銃 長倉洋海の眸」が全国で順次公開されている。

 

同 特別賞
賞状・賞牌(巖谷小波レリーフ)・副賞10万円

贈賞理由

公益財団法人 東京都慰霊協会は、2023年の関東大震災100周年を記念して、巖谷小波の戯曲「震災記念おとぎ歌舞伎『えんま裁判 なまずの髭抜』」(1924年上演)をアニメーション映画化し、記念行事の一環として上映されました。しりあがり寿氏による精妙・軽妙で諧謔にみちた原画を用い、周到に製作されているこのアニメーション作品は、100年前の原作を再評価したばかりでなく、この国に固有の地震という自然災害について、子どもたちをふくむ一般観客の関心と理解を深めるものでした。その優れた企画と作品に対して、巖谷小波文芸賞特別賞を捧げます。

受賞団体からのメッセージ

巖谷小波文芸賞特別賞を受賞し、大きな光栄と受け止めています。横網町公園は慰霊と伝承の公園です。関東大震災100年を迎え、この先も、この役割を果たすためにはより広い世代に復興記念館に関心を持っていただく必要があると感じ、所蔵資料の中から、子供向けに書かれた戯曲「震災記念おとぎ歌舞伎『えんま裁判 なまずの髭抜』」を動画化しました。原作は舞台での上演のために作られたものですが、映像化するには、上映時間の短縮や動画キャラクターの作り方など、クリアにすべき課題がありました。巖谷國士先生に相談したところ改変を快く受け入れていただき、キャラクターデザインをしりあがり寿先生にお願いしました。セリフの言い回しは可能な限り原作を活かし、歌舞伎調の効果音や史実に沿った背景作りなどに工夫をして、全体で約30分の動画としました。現在も復興記念館一階で大好評上映中です。この受賞を機に今後とも、所蔵している貴重な史料に、今日的役割を与え、関東大震災伝承の機能を引き継いでいけるよう努力してまいります。

第44回巖谷小波文芸賞受賞
略歴(復興記念館について)

都立横網町公園復興記念館は、関東大震災の惨禍を永く後世に伝え、また官民協力して焦土と化した東京を復興させた当時の大事業を永久に記念するため、震災記念堂(現東京都慰霊堂)の付帯施設として昭和6年(1931年)に建てられました。館内には、大震災の被害、救援、復興に関する遺品や被災物、絵画、写真、図表などが展示されています。
現在は公益財団法人東京都慰霊協会が指定管理者として管理しています。

(敬称略)

選考委員(五十音順・敬称略)
巖谷國士
さくまゆみこ
野上 暁
百々佑利子

第61回久留島武彦文化賞受賞決定のお知らせ

令和5年度の久留島武彦文化賞は、去る9月20日の選考委員会におきまして、下記の通り決定いたしました。ご報告とともにお力添えを感謝いたします。

第61回久留島武彦文化賞
【団体賞】
賞状・賞牌(久留島武彦レリーフ)・副賞30万円

贈賞理由

「紙芝居文化の会」は2001年に創立されて以来、紙芝居を日本独自の優れた文化財と位置づけて研究すると共に、「演じ方」を探求している。理論と実演を探求するために開催している国内の「講座」では、受講者の中から紙芝居の自主グループを育て、また海外でも、紙芝居講座や紙芝居の実演、講師派遣を行い、2012年にはパリのユネスコ本部で「ヨーロッパ紙芝居会議」を共催した。これらの活動は、多くの方々の共感を呼び、会員数は、国内個人会員533名・団体会員12、海外では56の国と地域に個人会員288名・団体会員23を数えるまでとなった。紙芝居の文化としての研究と、幅広い普及・啓発活動に対して久留島武彦文化賞団体賞を贈ることと決定した。

受賞団体からのメッセージ

「紙芝居文化の会」を創立した時、集まったのは20数人でした。その人たちすべてが運営委員になって活動がはじまりました。そして22年、まさかこんなに大きな会になるとは、夢にも思いませんでした。私たちは、紙芝居を派手なパフォーマンスで演じるのではなく、作品のもっているメッセージを大切に、心を込めて演じると、素晴らしい共感の世界が広がることを実践してきました。そして、優れた作品には人々を幸せにする力があることを学びました。さらに、日本が生み出した紙芝居を世界中に広めたいと願い、さまざまな国を訪れ紙芝居について話し演じてきました。海外の方たちも紙芝居をあたたかく受け入れて下さいました。これらの活動に対して、素晴らしい賞をいただけて本当に感謝いたしております。受賞を励みに、これからも地道な活動を続けていきたいと思います。
(代表 酒井京子)

略歴

2001年12月7日創立。日本で生まれた紙芝居を文化として深め、広げていくために、紙芝居講座を全国で開催。紙芝居の理論を伝え、演じ方を講評する独自の様式を確立。会報とミニ通信で会員への情報共有を行う。2017年、『紙芝居百科』出版(企画制作・紙芝居文化の会、童心社刊)。2018年、12月7日を「世界KAMISHIBAIの日」として、日本記念日協会に登録。現在、世界57か国に約900名の会員がいる。

 

同 【団体賞】
賞状・賞牌(久留島武彦レリーフ)・副賞30万円

贈賞理由

「下関少年少女合唱隊」は1965年に創立され、小学校入学前の幼児から大学生までを合唱隊の構成員とし、合唱を通して隊員の感性を高め、協力の精神を培い、春・秋二回の定期演奏会の他、他都県の児童合唱団との交流、海外公演など多くの活動で、合唱音楽の啓発・普及に取り組んでいる。また、地域の様々な行事においても歌声を披露し、地域に根ざした活動を行い、2023年で45回目となった「チャリティコンサート」では、募金を集め、下関市の社会福祉事業に寄付を行ってきた。創立以来58年の長きにわたり、隊員青少年の健全育成と児童合唱の発展、地域への貢献を継続している功績に対して、久留島武彦文化賞団体賞を贈ることと決定した。

受賞団体からのメッセージ

本州の西の端下関で大きな理想を掲げ生まれた男女25人ずつの小さな合唱隊が、皆様のご支援により58年の時を経て、児童合唱界をリードする合唱団に育て上げられたことに感謝いたします。明治維新の扉を叩き、和と洋が融合した独特の文化発展を遂げた下関…いつの時代も若者はその先陣をきってきました。子どもたちは輝いています。目が、心が、そして歌声が。その光はすべての人々を温かく包み込む力をもっています。子どもたちの笑顔は世界の宝物です。合唱隊の四つ目の隊則「歌をとおしてみんなきょうだいです」の言葉にすべてが表されています。歌は私たちに「生きること」を教えてくれているのです。自分の思いをしっかりともち伝えること、そして相手を思いやり調和すること…ハーモニーを創るということは人生を創ることに他なりません。
子どもたちの心に思いを寄せた歴史ある、そして温かい久留島武彦文化賞の受賞に心より感謝いたします。子どもたちの笑顔が世界の未来となることを信じ、これからも歌い続けていきます。
(代表 能野則之)

略歴

1965年発足以来、「美しいものを大切にします」「いつも明るく合唱練習を楽しみます」「隊員として恥ずかしくない態度で行動します」「歌をとおしてみんなきょうだいです」この四つの隊則のもと58年間歌い続けてきました。山口県出身の金子みすゞ、まど・みちおの詩に音楽を付けたオリジナル曲や、合唱隊の隊則を元にした合唱組曲「四つの約束」、合唱ミュージカル「兎になったかぐや姫」を発表するなど、下関から全国への文化発信を積極的に行っています。隊員は現在、2歳児から大学生までの約90名で、まさしくきょうだいのように楽しく過ごしています。

(敬称略)

選考委員(五十音順・敬称略)
衛藤征士郎
小森美巳
結城昌子
井田 正文

贈呈式の開催は今年も見送ります。

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